August 12, 2008
ノーラン監督によるバットマンのシリーズ二作目の映画を観ました。ちなみに一作目は渡辺謙が出ていた「バットマンビギンズ」。
ダークナイトのナイトっていうのはknightの方で、バットマン自身が「暗黒の騎士」だという意味。
この映画、アメリカではかなりのヒットだったそうですが、日本では恐らくあまりに世界観がダークすぎて受け入れられないのではないでしょうか。
ダークというのは、単にならず者が現れてドンパチをやっている、というような意味ではなくて、悪とは何か、正義とは何か、を捉え直しながら、勧善懲悪というアメリカが好きな価値観をわざと揺るがせようとしている製作側の態度から来ているように思えます。
悪役のジョーカーは、バットマンがいるからこそ自分の存在意義がある、と言い放ちます。全ての物事は二面性を持っている。悪があるからこそ正義も生まれる、そして正義を通そうとするからこそ悪も生まれるという矛盾をあぶり出すのです。今のアメリカの状況に対する辛辣な告発ともとれます。
その結果、正義であることの苦悩を表現するために、この映画は爽快なヒーロー映画では考えられないストーリ展開となります。重要人物がことごとくジョーカーの手にかかって殺され、善人さえ悪人に変わり、信頼していた周辺の人々も裏切りをしていく。信じられる物が無くなるくらい、観ている者の倫理観を侵していきます。
ジョーカーという人格の不気味さも際立っていますし、もちろん派手なアクションシーン、爆発シーンなど激しいシーンも盛りだくさん。2時間半近いかなり長い映画ですが、ジョーカーの執拗な攻撃の連続に息つく暇も無く見せた映画の流れも見事でした。
"Why so serious?" シリアスにならざるを得ない流れを嘲笑うようなジョーカーの名台詞です。
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July 24, 2008
アフタースクールを観た後、この監督の作品が気になって、前作のデビュー作「運命じゃない人」をDVDで鑑賞。
これまた、むちゃくちゃ面白い映画でした。トリッキーで技巧的な構成はこの監督のトレードマークなのですね。涙を流しながら笑いつつも、一つ一つのネタの仕込み方、全体の辻褄のあわせ方に唸らされてばかり。かなり低予算で作られたようですが、脚本の良さと演技の面白さでここまでのクオリティの映画が出来ること自体、日本映画では奇跡的ではないかと思ってしまいます。
ストーリーを紹介しようと思うのだけど、これが難しい。最初はほのぼの恋愛映画かと思わせつつ、中盤からやくざとか出てきて一気にきな臭くなってきます。
構造的には、このストーリーは全部で三つの部分に分かれます。各部分は、全てある一晩の出来事を語っているのだけど、それぞれ別の人物の視点で同じ時間が三回なぞられるのです。
だから、全く同じシーンが何回か現れます。ただ、同じシーンなのに違う人の視点で見ると、全く違う様相を帯びてきます。三人目の部分になると、「えー、あのときあそこで・・・だったの!」とか、「実はこのとき・・・だったんだ」とか驚きの連続。
もう、技巧的の一言。わりと無名な役者ばかりなんだけど、それぞれの演技がまたうまい。そう思わせるだけのリアルな脚本なのかもしれません。
どうも、私はこういった練りに練った技巧的で、細かいところまで辻褄が合っている論理性をベースに持っている作品とかが好きなんですね。だけど、そういう作品って、技術的なだけでなく、気持ちの落としどころとか、ちょっと心に残る部分とか、情緒的な部分も決しておざなりにはしていないように思うのです。
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July 10, 2008
内田けんじ監督の非常にトリッキーなストーリーを持った映画を観ました。
基本的に途中からのどんでん返しがこの映画の魅力なので、ネタバレを書いてしまうわけにはいきませんが、本当に騙されました。これは面白い。
映画だからこそできるトリックです。この系譜としては、「シックスセンス」なんかが代表的ですが、あれはあくまで最後でのどんでん返し。ストーリの中盤から、あれ、あれ、どうなってるのー?と何度も頭を捻らせながら観るのは新鮮な体験。しかも、後々考えてみると、前半の仕掛けに思わず唸らされてしまいます。
最近、邦画でも脚本がしっかりしていて、さらに観る者を驚かせるような作家性の高い映画が増えてきました。三谷幸喜モノはもちろんのこと、去年の「キサラギ」なんかもそういった感じの映画。
ようやくハリウッド映画の面白さに近づいてきた感じです。もちろん、未だにぐだぐだな脚本なのにアイドルを使ってヒットしてしまう映画もたくさんありますけど、こういった映画が注目を集めるようになって嬉しい限り。
芸術性というと、どうしてもシリアスさや格調高さ(文芸風というような)に向かいがちだけど、エンターテインメントを極めながら練りに練った技巧的な内容で楽しませることも芸術性の一つとして評価されるべきだと私は思います。
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June 17, 2008
テレビで激しく宣伝している三谷幸喜監督の最新映画。前回の三谷作品の感想はコチラ。
相変わらずの笑いのセンスに、今回も涙を流しながら笑っていました。本当に楽しめます。これがフジテレビ製作ってのがクヤシいくらいです。
三谷作品の場合、やはりどうしても芸術論的な話をしたくなってしまいます。
というのは、本質的に日本の芸術に欠けているものをこの人はふんだんに持っているような気がするからです。
今回は、特にその人工的とも言える世界観が非常に印象に残りました。時代設定もあやふやにしてしまうようなレトロな街並み。そこにいる人たちも、衣装や雰囲気がレトロ。だけど、時代背景はやはり現代なんですね。
古きギャングの話にリアリティを持たせるために、セットや美術まで含めて全部ゼロから作り上げてしまう、そういう細部にわたる世界観をきちんと作り上げるだけの溢れんばかりのクリエイティヴィティがあります。今の日本の映画では本当に珍しいことです。
思うに、三谷幸喜の凄さというのは「想像力の正確さ」なのだと思います。
誰しも学生時代などにちょっとした寸劇をやったり、舞台で何か踊ったりしたような経験があると思います。演出などを自分たちで考えていると、そのときはスゴいいいアイデアだと思ったのに、いざやってみると、かなりすべっていたり、あまり評判が良くなかったり・・・。なんか、合唱団のサムい演出を思い出してしまいます・・・。
モノを作り上げる、創造する、という行為には、作り上げたらどうなるのかと「想像」することがどうしても必要です。頭の中で思い描いた「想像」が独りよがりのものでなく、誰が見ても納得できるようなものになっていたか、そして製作側が意図していた通りに受け取ってもらえたのかが大事なのであり、そこまできちんと製作段階で読み切る想像力こそが、クリエーターとしての重要な資質に思えます。
そういう意味で、この映画、非常に複雑なシチュエーションが設定され、その虚構の中で繰り広げられる台詞の一つ一つが非常に精度が高く練られていて、その想像力に舌を巻きます。思いもよらぬ展開に観客はただただ三谷的想像力ワールドのジェットコースターに乗って振り回され続けます。
卓越した人間観察力、そして事態の先を読む力、それがこの想像力の正確さをより高めています。
想像するだけなら誰でも出来る。問題はその正確さ、質の高さということなのです。
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May 06, 2008
ラフマニノフと彼に関わる女性を描いたロシア映画を見ました。
これまであまり馴染みのなかったラフマニノフという作曲家について、見終わったあと、かなり興味を抱くようになりました。何といっても、彼の作り出すメロディは美しい。生きている時代からすると、その作風の保守性ばかりが指摘されがちだけれど、後世に残るメロディを作れるというのはそれだけで類まれなる才能だと思えます。
内容としては、ラフマニノフを愛する妻のナターシャが、いかなるときもラフマニノフを支え続けたその献身的な姿を描いています。時には他の女性に心を移してしまうことさえ許しつつ、気が付けば彼女のところに戻って来ざるを得ない母のような包容力は、(男性から見れば)ある種理想の女性像なのかもしれません。
映画で表現されるラフマニノフは、恐らく実際とそう違わないのかもしれないけど、神経質で小心者で、それでいて喜怒哀楽が激しく、強い主張で周りを翻弄し、絶えず追い詰められた切迫感の中で生きているといった性格。こういったいかにも芸術家肌的な男性に、母性本能をくすぐられるという側面もあるのでしょう。しかしそれも献身的な愛を捧げる価値があるほど、彼の紡ぎだす芸術は神聖かつ比類ないものだという芸術至上主義があってこその行動です。
まあ、ラフマニノフは(後から見れば)十分スゴイ芸術家なので許されますが、売れもしない芸術家の才能を信じて一生を捧げるというのは、世間的感覚から言えばかなりリスキーで、もしそんな人がいるのならイタい女性と思われるのがオチかも。
ロシア映画ということもあり、20世紀初頭の雰囲気を出すのに昔の映像を使ったのは恐らく撮影が難しかったからでしょう。ハリウッドなら金かけてそういう映像を作っちゃうだろうし。また、アメリカ舞台でもみんなロシア語をしゃべっているとか、まあそういった辺りはそれほどシビアには作っていない感じもします。
その一方、師匠との決別とか、精神科医との交流とか、スタインウェイ社の商業主義への反発とか、史実をうまく織り込んであるのは伝記的映画として面白く見ることができます。
またラフマニノフの言動とか、一家のゴタゴタの描写とか、そういう人物描写は妙にリアルで、演技の良さもなかなかのもの。ラストもさりげない家庭の一コマなのに感動しました。
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April 10, 2008
正直、ありがちな青春&根性&人情モノだと思い、最初から期待はしていなかったのですが、何かしら義務感のようなものにせき立てられて、結局この映画、見ることにしたのです。
しかし、過剰な期待がなかったせいか、想像以上に面白かったです。全体に漂うB級感、シュールでファンキーなギャグや演出など、予想外の可笑しさ。
しかしそれ以上に驚いたのは、「合唱」の本質について、映画の中でかなり突っ込もうとしていたこと。
不良少年の権藤が主人公に対して説教するくだり「テクニックとかではなくて、歌にとって一番大切なことは何か?」
もし、この答えが「心」とか言うのだったら、私は大変幻滅したことでしょう。そんな予定調和な答えこそ、嘘っぽさ、安っぽさを感じさせてしまうのです。
彼の言ったことはスゴイ。
「フルチンになることだ!」
つまり、飾りを脱ぎ捨てて、裸の自分を見てもらう覚悟を持て、ということ。なかなか深い言葉じゃないですか!
そんなわけで随所に、なかなか感心するようなセリフが散りばめられてます。ストーリは結局、合唱コンクールの最後の舞台で終わるという、ある種ありがちなパターンではあるものの、映画製作者が伝えたかった想いはかなり明瞭に伝わってきました。
全般的には、合唱がかなり自虐的に扱われていて、個人的にはヒット。でも嫌う人もいるかも。
どんなにダサくても、でもやっぱり合唱っていいよね、と最後に思わせるってのは、この映画の力量だと思いました。
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February 11, 2008
噂の合唱映画です。
とはいえ、主役はどうも音楽や合唱ではなくて、どちらかというと典型的な市井の人々の人情物語ともいうべき映画。
原作は落語なんだそうです。確かにこの映画を貫いている価値観は落語のそれ、なのだと思います。笑いあり、涙あり、最後はみんながそれぞれに幸せになって終わるという、まあ最初からストーリーはわかりきってはいるものの、やはり日本人としてはこういう話が安心して観られます。
もともとこの話のテーマは、いわゆるお役所仕事、と言われるような融通の利かない、公務員の仕事を皮肉ったもの。市民ホールに勤める小林薫扮する主人公のテキトーな仕事ぶりが、かなり笑えます。外国人ホステスにお金をつぎ込んで問題を起こし、左遷されたという設定など、なかなかブラックな時事ネタ。
それにしても、時間だからといって、カラオケしているオジサンたちの機材の電源をバチッと切ってしまう、ってのはなかなかすごいですね。そんなことしたら、すごい雰囲気悪くなりそう。
ちなみに、私たちが使っている公民館は、最近、業者に委託されるようになって、逆に融通が利かなくなってしまっているような気がするのだけど。
まあそんな映画なので、音楽の内容に突っ込むのは野暮です。
ママさんコーラス(女声合唱)が第九を演奏会でやるのも、まあ驚きですが、ソロを歌う人がとても上手いとか(あれだけ上手いのに、謙遜していると逆にやな感じ)、第九のドイツ語が妙に訓練されていたりとか、いや全般的には普通のママさんにしては演奏が立派過ぎるのがややリアリティがないなと、思ったりしました。
映画だからしょうがないけど、演奏会に来てくれたお客さんがみんな歌に感動して喜んで帰ったりしている辺り、なんか現実が見えてないような気がして・・・、いやここで言うのが野暮なのはわかってますけど。
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January 26, 2008
ティム・バートンのファンとしては、この映画、もちろん見ないわけにはまいりません。
彼については、以前もいろいろと書きました。(コレやコレ)
今回は、「ビッグフィッシュ」「チャーリーとチョコレート工場」というファミリーでも見れるファンタジーから一転、ダークで陰鬱、血なまぐさい復讐劇に変わります。しかし、いくらストーリーが変わっても、バートン節は健在。いたるところに、ティム・バートン的世界が散りばめられていて、もちろん、いたく感動しました。
今回は何といっても、ミュージカル映画である、ということが大きな特徴。
そもそも「スウィニー・トッド」ってミュージカルとしてすでに有名な作品なのだそうです。今回、映画中に使われた音楽も、その元もとのミュージカルの音楽が使われています。
音楽の特徴は、ポップな感じとは違って、オーケストラによるシンフォニックなサウンドで、曲とセリフの境目が不明瞭な感じが、むしろオペラと言ってもいいような感じになっています。音楽的にはドビュッシーとかのようなフランス的な雰囲気が漂っていて、「ペレアスとメリザンド」でも観たような気分。何度か現れる二重唱なんかも、すごくオペラ的です。
ということで、この映画を一言でいえば、「スプラッターオペラ」という感じか。
スプラッターというからには血が流れまくります。R-15指定です。スウィーニー・トッドは殺人理髪師なのですが、カミソリで容赦なく首がかき切られていきます。結末はかなり衝撃的で、(バートン世界に精通していない)一般な方なら陰鬱な気分で席を立つことになるかも。
しかし、手加減のないファンタジーこそがティム・バートンの真骨頂であり、それをドラマとして割り切りながら、その世界観を堪能するというのがこういった映画の楽しみ方でしょう。
もともとミュージカルということもあり、舞台となる場面がかなり閉鎖的。また、歌でその時々の心情を表現するので、若干映画としてのスピード感は失われています。
ただ、やはり歌の力というのは強いなあ、とあらためて思いました。トッドの娘が囚われの身になっているときに歌う歌にはホロリとさせられました。
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January 06, 2008
年末年始に見た、三つの音楽系番組の感想など
個人的に大ヒットだったのは、年末の「いかすバンド天国」略称「イカ天」の特別番組。もう、イカ天ブームも19年前なんですねぇ~。
放送当時、私は入社直後で会社の寮生活をしていたのですが、同期入社のメンツでロックバンドなどをやっていて、土曜の夜には誰かの部屋で「イカ天」を見ていたものです。懐かしい・・・
それに今見ても、音楽も全然古く感じないし、アマチュアの熱さがひしひしと伝わります。何より、音楽におけるオリジナリティとは何か、そういう命題を視聴者に突きつけるような番組だったのだと思います。
次は年末のNHK紅白。
これは、最近の「芸能」世界での音楽状況を知るにはとても良い番組。要は流行の音楽チェックと、歌い手のチェックですね。
今年はテンポ感も良くて、色々工夫していると思いました。
あみんが再結成なんだぁ~とか、各世代にも配慮されているし。
あと、夕べ見た「のだめカンタービレ」。
のだめの話題は前も書きましたね。
バカバカしいくらいのキャラの立て方をしている割りに、妙に音楽世界の生々しさが伝わってきて、そのリアルさに、ついつい引き込まれます。内容も何となく嘘っぽくない感じが良い。
プロフェッショナルな現場だから当然だとしても、音楽演奏には必要な知識習得だとか、分析だとか、そういう工程があって、でもやっぱり最後には奏者のクリエイティビティがあって、という厳しい現実をきちんと描いています。
でも、アマチュアの世界では、そういうのが小賢しく思われていて、どうしても向上心が変な方向に向かっちゃうんだよね・・・。
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December 29, 2007
今年の締めくくりに、映画館で見た映画を全部ご紹介。
去年の一覧はこちら。
・007 カジノロワイヤル
・マリーアントワネット
・さくらん
・パフューム
・ハンニバルライジング
・バベル
・ラブソングができるまで
・スパイダーマン3
・ユメ十夜
・プレステージ
・300
・ボルベール
・トランスフォーマー
・呪怨 パンデミック
・デスプルーフinグラインドハウス
・ショートバス
・ヱヴァンゲリヲン新劇場版
・プラネットテラーinグラインドハウス
・インヴェージョン
・自虐の詩
・バイオハザード3
・キサラギ
・アイアムレジェンド
・クワイエットルームにようこそ
ということで、皆様、良いお年を!
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December 28, 2007
松尾スズキ監督の「クワイエットルームにようこそ」を観ました。
精神病院の女性隔離病棟に自殺未遂で入れられた主人公、明日香がそこで様々な人と出会い、また自身がそこに入るまでの人生を反芻しながら、二週間で退院するまでの様子を描いた映画。
もちろん、そこで登場する人々は、一癖も二癖もある人たち。心の痛みゆえにその場に居ざるを得ないという、人生の負の部分が凝縮されたような空間。
もちろん、内容は相当シリアスなはずなのだけど、前半はひたすらギャグ中心で、正直、私は涙を流しながら笑ってました。これって、やっぱり演劇のノリなんですね。役者もみんな上手いし、間の取り方なんかも絶妙。
ただ、笑いの方向性というのが、確かにセンスはあるのだけど、ナンセンス系、シモネタ系、自虐系という、ちょっと日本的になってしまうのは仕方ないところか。
正直、全体的に若者視点というか、純文学的なのだけど、興味の対象が自己の内面だけというか、そういった感じが私の感性とはちょっとずれていた感じがしました。太宰治を読んだ後の違和感とでも言うべきか。
主人公の自堕落で自己中心的な生活、もちろん自分でもそれを良いものと思っておらず、常に自責の念にかられているのだけど、現実の容赦ない事件がどこまでも主人公を追い詰める。こういう破滅型キャラだからこそ、分かり合える美学というのがこの映画にはあるのでしょう。
基本的に、ついつい慎重に生きてしまう私には、この映画のような人生は望んでも送れないだろうな、と思ってしまいます。
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December 22, 2007
「地球最後の人間」というアイデアには、何か惹かれるものがあったのです。
同じネタとしては、私などドラえもんの「独裁スイッチ」を思い出してしまいますね。何もかもめんどくさい~、みんないなくなっちゃえ、と一瞬思っても、そんな状況の空恐ろしさは、ちょっと冷静に考えてみるだけでぞっとします。
だからこそ、何が原因でそうなったのであれ「地球最後の人間」には、そういう究極の寂しさ、果てしもない孤独、という描写が絶対的に必要。そして、この映画、こういったテーマを真摯に取り上げようとしていたことについては、とても好感を持ちました。主演のウィル・スミスも、こういった演技をかなりシリアスに演じきっていたし、主人公のお供をする犬の演技も良かったです、マジで。
なので、できればもっともっと、このテーマを掘り下げて欲しかったなあ、というのが私の感想。
というのも、後半、「あれ、最後の人間じゃないじゃん」みたいな感じになってきたのは、ちょっと何となく興ざめ。
それに、なぜ一人だけになってしまったか、という理由が、ウイルスによる人間のゾンビ化・・・って、もうこの設定あまりに安すぎです。個人的には「バイオハザード」でしか許せない感じ。もう少し別の設定にできなかったもんでしょうか。
脚本的にはもう少し心理劇のような映画に出来た気もしますが、やはり最後にはそれなりのドンパチが無いと興行的にはきっと厳しいんだろうな、などと穿った見方をついついしてしまいます。
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November 18, 2007
何と全編、舞台はたった一つの部屋。そして登場人物は男五人、というまるで小演劇のような映画です。
しかし、これは面白い!
笑って、驚いて、そして最後は泣いて、しかもそれが数秒単位でめまぐるしく変わっていく疾走感溢れる流れ。何といっても、この映画の面白さは、脚本の素晴らしさ、及びそれを演じきった五人の役者の素晴らしい演技にあったと言えます。
ストーリーは、1年前に自殺したB級アイドル「如月ミキ」の一周忌をやろうと、ネットの掲示板で知り合った人たちが集まるところから始まります。みんなハンドルネームで語りながら、初めまして、というシチュエーションは、Niftyのオフ会を思い出しますねぇ。
しかし、しばらくして最初の和やかな雰囲気は、あっという間に消え去り、如月ミキは自殺ではなかったのでは?という問いかけから、男五人の凄まじいまでのやり取りが始まるのです。
どんな話をしても、全てネタバレになってしまうので(ストーリーの流れは、新事実が判明する驚きの連続です)、これ以上は内容は書けないのだけど、もう一つ一つのエピソードがうまく練られていて、伏線の張り方もとてもうまい。それでいて、こんなストーリーで最後泣けるとは予想もできませんでした。
ただし、ラストシーンはちょっと余計だったかも。そこだけが残念かな。
どうも最近の邦画って、キムタクものとか、フジテレビものとか(同じか)、子供向けとか、誰か最後に死ぬやつとか、そういう個人的にあんまり興味のない映画はヒットしているのに、先日見た「自虐の詩」とか今日見た「キサラギ」とか自分が気に入った映画のほうが、商業的に成功しそうもないのはどうしてでしょう。(日曜の昼なのに今日の観客も少なかったなあ)
私は、こういう脚本も演技も技巧的な映画ってクリエータ魂を刺激され、とても感銘を受けます。
決して高尚なテーマじゃなくても、敢えて俗っぽいアプローチでも、芸術性の高い映画って絶対あり得ると思うのです。
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October 28, 2007
もはや慣用句となっている「ちゃぶ台をひっくり返す」。
この言葉を、そのまま映画にしたらどうなるんだろうという企てで作られたような映画。
前半に集中する、阿部寛のちゃぶ台ひっくり返しは、芸術的とも言えます。これをしっかり捉えたカメラワークも素晴らしい。
ごはんが、味噌汁が、寿司が、うどんが、とんかつが、宙を舞って飛び散る、そこに潜む美学に日本人なら誰でも心打たれるはず(ほんとか)。ちゃぶ台返しにここまでこだわった映画はきっと今までになかったことでしょう。
ついでに、畳ごとひっくり返したときに、床下からねずみが飛び出していたのはCGによるシャレだと思われます。
さて、この映画の基本的な内容は、貧乏で社会の底辺を這って生きているような人々が、幸福って何だろう、と考えつつ、笑いあり涙あり、の日々を描写したものです。
正直言って、「嫌われ松子の一生」と中谷美紀のキャラがほとんどかぶっています。中谷美紀は完全にこの手の人物がはまり役になってしまった感あり。ストーリーも「嫌われ松子」に近い雰囲気を持っているのですが、中学時代のエピソードなど、微妙なリアリティがあり、後半は結構涙腺が緩みっぱなし。
泣いて笑えるなかなか面白い映画です。
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September 24, 2007
アニメオタクとは程遠いつもりの私ですが、なぜかエヴァは気になるので、見に行ってきてしまいました。しかし、あのエヴァブームからはや10年。中身はすっかり忘れ去っていました。
そういう意味では、また新しい気持ちで見たことになったわけですが、いややはりなかなか面白いです。ロボットアニメのフォーマットを借りながら、子供向けアニメとは全く次元の違う世界が展開されていきます。
私の感じるところの、エヴァの面白さをいくつか挙げてみましょう。
・聖書や精神医学などの言葉を多用した衒学趣味。結局のところ、よほどのマニアでないと言葉の意味が全部わからないハズ。原作者さえ論理的整合が困難になるほど、いろいろな要素が詰め込まれ、しかもほとんど作中で詳細な説明がされない。
・ロボットアニメなのに、すごく生物的でグロい。使徒も気持ち悪い死に方をする。ロボットだから強い、という方法論を捨て、生き物的だからしぶとく、そして制御が難しい、という新たな価値観を提示している。
・内省的で引きこもりがちなナイーブな少年、少女の気持ちの表現がリアル。典型的なアニメ的セリフの中に、ポロリと非常に純文学を思わせるセリフが点在する。
・いわゆる今までのロボットアニメにはあり得なかったような、少年視線でのエロチシズム表現が多い。
そんなわけで、続編も楽しみにしてます。
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August 20, 2007
浜北にサンストリートというモール街が出来て、その中に東宝シネマズが入りました。
浜松にも東宝シネマズがあるのに、ほぼ同じ都市圏内にもう一つ東宝シネマズが出来るというのは、思わずその出店戦略を考えてしまいます(浜北だって、もう浜松市になっちゃったし)。良く解釈すれば、上映作品をうまく散らばせて、浜松近辺全体で市場そのものを拡げよう、つまり映画人口そのものを増やそう、と考えているとも思えますが、さてどうでしょう。
しかし、実際オープン間もない日曜の昼という、これ以上無い良い条件と考えられるにもかかわらず、お客がそれほど多いとも思えなかったです。ちょっと先行き心配。
というわけで、サンストリート浜北の東宝シネマズで「呪怨」を見てきました。お客は10人強。さらに心配・・・。
「呪怨」はハリウッドでシリーズ化され、今回もハリウッド製ながら清水崇監督、というアメリカでのジャパニーズホラーブーム(?)を象徴するような映画です。
正直言うと、ひたすら脅かしの連続に、あまり品の良さを感ぜず。雰囲気もだんだんリングっぽくなってきて、ネタの枯渇が心配されました。なぜか上映は日本語吹き替えのみだったのですが、一番酷かったのは、その吹き替え。超棒読み。これはちょっとマズイでしょう、という感じ。
後で某女性漫才師だとわかりましたが、声優なんて誰でも出来るってわけじゃないでしょう。
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July 01, 2007
今週末、二本の映画を観たのですが、両方ともなかなか面白かったので、一緒に紹介。
しかもこの二本、全くの正反対の映画。「300」は、ひたすら戦闘シーンのマッチョな男性誌的映画。「ボルベール」は男と女、そして母と娘の愛憎劇といった女性誌的映画。
「300(スリーハンドレッド)」は紀元前500年ころの、スパルタ対ペルシアの戦争を描いたもの。しかし、いわゆる歴史映画とは趣が異なっています。例えば、もはや劇画チックとも言えるくらい典型的な正義と悪との対比とか、血しぶきが飛び、手や足や首がスパスパ飛んで行く、グロさ一歩手前の殺戮シーン(ちなみにR-15)、あり得ない怪物や奇形人間なども登場といった具合。史実を元にした男性視点のファンタジーといった感じです。
そういう意味では、全く内容に深みはないのですが、逆にそこまで開き直った勧善懲悪が心地よくて、不謹慎ながら敵をバッタバッタと切り殺していく様は爽快感さえ感じました。それを強調するような映像美もなかなかのものです(非常に二次元的な、不思議な映像でした・・・何らかのエフェクトを使っているのでしょう)。
続いて「ボルベール」。出てくる人物はことごとく女。主人公と、その娘と、その姉と、その母と、その叔母と、叔母の隣人だけで成り立っている狭い人間関係。そして、その影には横暴で女を不幸にさせる男の影が・・・。
酔って娘を犯そうとした主人公の夫が逆に娘に刺されて殺されてしまう、というショッキングな事件からストーリーは急激に回り始め、最後には想像もしなかったような過去の事実が明らかに・・・。韓国ドラマ的とも言うべき、ベタなストーリーであることは否めないけど、何しろ登場人物一人一人の生き様がリアルで力強いというのがスペイン的なのでしょう。特に主人公を演ずるペネロペ・クルスの演技の熱さ(ついでに豊満さ)が、何しろこの映画の見どころ。中盤でレストランでのボルベールの歌を歌うシーンは思わず泣けてきます。
つまり、典型的ではあっても、描きたいところに集中して、しっかり作っていけば面白い映画になるのだなあ、と納得。
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June 03, 2007
「こんな夢を見た。」でおなじみの夏目漱石、夢十夜の各エピソードを十人の監督によるオムニバス形式で映画化した作品。(HPはこちら)
浜松で二日間だけ上映があったので行ってきたら、第五夜の監督をした豊島圭介氏が何と会場に来ていて(浜松出身らしい)、映画が始まる前に挨拶をしてくれるというおまけ付き。映画作りのいろいろな苦労話を聞けたのは面白かったです。豊島氏によれば、1話あたり制作費は1000万円なんだとか。
映画のほうですが、いやまあ、さすがに各10分で10人分の作品を見るのはキツイです。作風もノリも全然違うし。それに、10分という制限があると、各監督ともストーリよりイメージに走るので、かなりシュール感が漂い、話を理解するというよりは、印象だけで良し悪しを感じるしかないといった感じ。
監督は、先日亡くなった実相寺昭雄、市川昆といったベテランから、「呪怨」の清水崇、その他松尾スズキ、天野喜孝といったなかなか豪華な面々。
個人的には松尾スズキ氏の第六夜、2ちゃんねる風のセリフ、ブレークダンス運慶など、笑いどころが満載でむちゃくちゃ面白かったです。あとは、第三夜のやっぱりホラー系になってしまう清水崇作品、第九夜のお百度参りの話(監督:西川美和)が良かったです。
短いだけに、各映画監督のよりリアルな創作態度がクローズアップされてくるので、クリエータな人なら大変刺激を受けるのではないでしょうか。
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May 13, 2007
ふーん、なるほどねぇ、うまいなあ。
日本の超大作と違って、金をかければきっちりと面白い映画を作るんですよね。ほんとに感心します。
それに私、この作品の作り手の感性が、結構好きです。どういうことかと言うと・・・
そもそも、主人公ピーターは全く冴えないキャラ。一般的に、SFとかヒーロー物って主人公のカリスマ性に頼るところが大きいのだけど、このスパイダーマンシリーズは、あくまで「冴えない主人公」にこだわります
アメリカならなおさら、きちんと自己主張して、自ら未来を切り開くような力強い人物に賞賛が集まるはず。しかし、どんな世界だって、引っ込み思案で、自信なさげで、からかわれ易い体質で、大事なときに的確な言葉を話せないタイプの人間はいるわけです。恐らくサム・ライミ監督は、そういう人の心情を良く分かっていて、そういったイケてない人間を愛情を込めて描こうとします。ティム・バートンなんかもそういう傾向があるのだけど、誰の中にもあるそういったダサさ、自己卑下的な部分の表現にとても共感できるんです。
特に今回は、ピーターの人間的な弱さが、スパイダーマンであることの慢心や、自分を裏切った人への嫌がらせ、恋敵に対する嫉妬といったような、負の感情によるセコい行動として表現されていて、そういう感情表現がものすごくリアル。超娯楽アクション大作なのに、こんなセコい人間行動に着目するあたりが心憎かったりするんです。
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May 04, 2007
はっきり言って、恋愛コメディ系映画なんですが、意外と良く出来ていて面白かったです。
ストーリーは、80年代の元スターのアレックスが、偶然出会った作家クズレの女性とタッグを組み、ヒット曲を作ろうと頑張っていきつつ、二人はだんだん惹かれ合い・・・、といった内容。
最初に、アレックスが80年代にやっていた「POP」というバンドのプロモーションビデオだけでかなり受けてしまいます。流行り始めのデジタルシンセの音、シンセドラムの音などサウンドも80年代風、ビデオもバンドメンバーが歌いながら寒い小芝居をしていて、そういえば20年前のプロモってこんな感じだったなあ、と思わず苦笑。
それに、細かい描写も微妙にリアリティがあって笑えます。アレックスは今や、高校の同窓会でのパーティや、遊園地などのショーで日銭を稼ぐ毎日。往年のファンも、もはやいいオバさんなのだけど、当時を思い出してノリまくっている様子はかなり笑えます。日本でいえば、ディナーショーみたいなもんでしょうか。
そんなとき、アレックスに売れっ子歌手のコーラから作曲の依頼が来ます。
このコーラって歌手がまた面白い。日本で言えば倖田來未みたいなセクシーアイドルなんだけど、仏教をモチーフにしているんです。礼をするときは必ず手を合わせ、歌詞の中には仏教用語が散りばめられている。セクシーなダンスにも仏教的なエキゾシズムが組み合わさっています。コンサートの最初には、巨大な大仏から現れるというパフォーマンス・・・
さてさて、内容的にもなかなか考えさせるところがありますね。
あくまでいい曲を、いい詩を作ろうとする努力と、曲作りも売れ線狙いでビジネスとして割り切ろうとする考えが、曲を作ろうとする二人の間での葛藤になってきます。もちろん、最後は信念を通して、いい曲を作ろうとした想いが売れっ子歌手コーラまで届くのだけど、創作する者の共通した想いというか悩みというか、そういうのが表現されていたように思いました。
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April 28, 2007
話題性の高かった映画なので、ぜひ見たいと思っていました。
三つの舞台でのエピソードが平行して語られていくという、構造性の高いストーリー。この三つのエピソードは、冒頭の銃の発射事件という一点で繋がっているのですが、各エピソードが進行するに従ってだんだん絡んでいく・・・みたいな、脚本的なテクニックとはまた違います。実際には、各エピソードは平行して進行し、それぞれの物語がそれぞれに解決して終わります。個人的には各エピソードがだんだん絡んでくる・・・といった技巧的なストーリーのほうが興味あったんですが。
もっとも、この映画のウリはそのストーリーのシリアスさにあるわけです。
近くにいるのに分かり合えない、そんなシチュエーションを拾い上げ、ほんのわずかな狂いがどんどん拡大されて大きな悲劇に繋がる様子を描写します。誰も悪くないのに、事態はどんどん悪くなっていく。それは絶対的な悪の所為なんかではなく、みんなが持っているほんのわずかなエゴの所為なのでしょう。そして、本来的に人間同士が分かり合うことは大変難しいことなんだ、というのが、この映画の伝えたいことなのだと思います。
エピソードの一つ、日本が舞台のストーリーはややエキセントリック。菊地凛子扮する聾唖者の退廃的な若者風俗などは、いささか挑発的すぎるかも。日本が舞台で、日本人役者が演じていても、このストーリーは日本人の下じゃ作れないだろうなと思いました。
ただ、爆音のDJのシーンで何度も静寂になるところ、もちろん聾唖者の感じた様子を表現しているのでしょうが、言葉が通じない・・・「バベル」という状態をうまく象徴しているように感じました。
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March 05, 2007
異常に嗅覚が強い男がその能力を駆使し香水作りを始め、そしてついに恐ろしい犯罪に手を染めてしまうという話。舞台は18世紀のパリ。その男は、究極の香水作りのために、若い女性の香りを探し求めます。そしてついに連続女性殺人を犯してしまうのです。最後にその男の処刑のシーンがあるのですが・・・それが問題のシーンとなって話題になっています。
そもそも、このストーリー、スピルバーグ、リドリー・スコット等の有名映画監督が映画化を考えて原作者にオファーをしたという逸話つき。結局はそういったビッグネームでない監督による映画化となったようですが。
映画自体は、最初のほうでナレーション付きなのが時代物がかっていていまいちだと感じたのですが、後半、連続殺人になって街中が恐怖に震えるあたりからどんどん引き込まれます。
そして圧巻なのがラストシーン。簡単に言えば、数百人の壮大な乱交エッチシーン。まあ、人によってはかなり引いたようですが、なんというか、一種のファンタジーなんですね。香りが人々を恍惚にさせるということを、もっとも極端な方法で表現したというのか・・・。この映像を撮ったというだけで、監督は本望だったのではとも思えてしまいます。
主人公は目的のために手段を選ばない、冷徹な恐ろしさを秘めています。それが映画全体の気味悪さをかもし出していて、そのためになんとなくこの映画を見終わったあと、居心地の悪さを感じる人も多いかもしれません。
でも、こういったある種の悪趣味さ、グロさ、変態っぽさ、というのはすごくヨーロピアンな感じがするし、そういう中に究極の美を見出そうとする感覚には、どこか共感を覚えたりもするのです。
ラトル指揮・ベルリンフィルの音楽も巷では評判になっているようです。なかなか静謐で物悲しい感じで、きれいな音楽だと思いました。
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March 04, 2007
蜷川実花初監督の吉原の遊女を描いた映画「さくらん」を観てきました。もちろん、見るきっかけというのは、椎名林檎が映画音楽を担当したから、ということなので、正直映画そのものには期待してなかったのです。
だいたい、吉原の遊女の哀しみ、といった内容の映画など、恐らく私は通常見に行ったりしないような題材です。もちろん、ふか~い世界はあるのでしょうが・・・、嘘と嫉妬のうずまく人間模様ってのは、どちらかというと苦手な領域。
実際、この映画も基本的にはそういうお話なんですが、意外と良く出来たいい映画だと感じました。
原作はマンガだそうで、もちろん読んだことはないのですが、恐らく原作の質もいいのでしょう。気の利いたセリフや、人物描写のリアルさもなかなか。それに私が日本映画で一番弱いと思う脚本も、論理的整合性や小ネタの接続に感心するところが多かったです。例えば、ヤシロの桜の花のエピソードとか、髪飾りを渡すシーンとか。
あと、美術的にも絢爛な映画世界を良く表現していたと思います。その中でも面白いのは、金魚のモチーフ。映画を通じて、金魚が至るところで現れます。圧巻なのは、吉原の入り口に巨大水槽があって、そこに金魚が飼われているところ。映像における主題の扱い、というのもうまいと感じました。
役者もがんばってます。かなりきわどいシーンもあって、話題になっています。はっきり言ってエッチシーンは多いです。ただ、それもセクシーとかじゃなくて、ひたすら女性視点であるという点が面白いのでしょう。
音楽は、事前情報以上のものではなかったけど、映画の雰囲気と林檎世界がばっちりはまっていたことは確か。若い女性の観客が多かったので、きっと林檎ファンが映画を見に行く、という宣伝効果もあったんでしょうねぇ。
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December 31, 2006
今年の締めくくりに、今年一年、映画館で見た映画を全部ご紹介。
・キング・コング
・ミュンヘン
・PROMISE
・THE有頂天ホテル
・歓びを歌にのせて
・Vフォーベンデッダ
・嫌われ松子の一生
・パイレーツオブカリビアン~デッドマンズチェスト
・日本沈没
・スーパーマンリターンズ
・グエムル
・イルマーレ
・レディインザウォーター
・ペレアスとメリザンド
・トゥモローワールド
・犬神家の一族
一般的には多いほうかもしれないけど、それほど映画マニアってわけでもないですよ。
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December 25, 2006
ええ、もちろん見てましたとも。
マンガも読みました(妻が全部持っている)。
正直、面白かったです。多くのクラシック関係者が面白いっていうのも頷けます。確かにとても良く出来ている。リアルとバカバカしさのバランスが絶妙で、ありそうでない音大生の日常に思わず憧れてしまうのです。
しかし、のだめを貫くリアルさというのは、私の思うに「音楽への向き合い方」なのではないか、と思うのです。
よくよく見てみれば、このドラマ、良い音楽をすることが何よりも第一であって、友情や恋愛よりも優先される。実際、素晴らしい音楽というのは才能のある者がひたすら努力することによってしか生まれない、という当たり前でいて、目を背けたくなる現実があるのです。このドラマはそれを真正面から表現しています。
だから、センスの無い人間が一生懸命やってすごく上手くなった、などという感傷的な態度は一切取らないのです。主人公は、二人とも才能に恵まれているという設定。その才能が開花していく様子がストーリーになっているわけです。
たかが音楽、されど音楽。音楽の神様に許された者だけが高みに上がれる不条理な世界。残念ながら、そこでは人間社会の常識は通用しないのです。たとえ傲慢であっても、変態であっても、ホモであっても、音楽の神は無作為に降りてくるのです・・・
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December 12, 2006
今年も大河ドラマ、全部見ました。これもHDレコーダのおかげ。
とか言いながら、日曜夜8時のちょっと前に先週分のを見てないことに気付いて慌てて録画を見たりとかで(上書きモードで予約入れてるので)、便利になるのも考えものです・・・。
何といっても、どマイナーな戦国大名の山内一豊(の妻)を主人公としたというのが、良かったのかもしれません。信長も秀吉も家康も、全部客観的に描くことが出来るからです。しかも客観的どころか、かなり悪意を持って描いていたと言ってもいい。信長は「ワシがこの国の王じゃ!」とか言って、半分狂人みたいになってるし、秀吉はボケて失禁しているし。家康はわりとまともだったけど死に際がちょっとマヌケな感じ。
ところが、今回の脚本、敗者に対する思い入れがかなり強いように感じました。具体的には、明智光秀と石田三成。いずれも歌舞伎系の演技者を配し、どこまでも端正で、真っ直ぐなキャラ設定がされていたのはなかなか新鮮。ここまで明智光秀がカッコよくていいのか?というくらい、今までに無い明智像を提示してくれたと思います。これもマイナーな大名を主人公にしたおかげなのか。
全体的には仲間由紀江人気にあやかっている感はありますが、上のような脚本家のこだわりがちらっと見えてなかなか楽しめました。何より、山内、堀尾、中村、というマイナー大名の名前を知ることが出来ました。
来年は信玄ですね。山梨出身者としては、見ずにはいられません。
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November 19, 2006
2027年の近未来を扱っているけど、全然SFじゃない映画。ちょっとSFノリを期待していくと外します。
設定は、2009年に人類に最後の子供が生まれて以来、一人も子供が生まれなくなってしまった世界。ロンドンに住むある男が、ひょんなことからテロリストに協力することになり、そこで妊娠した女性と出会って・・・、というように話は展開していきます。
しかし、そのようにあり得ない舞台設定でありながら、そこで見せ付けられる情景はあまりにリアルで救いようのない殺伐とした社会。テロリストや警官たちによる容赦ない暴力と殺戮の嵐。そして、その陰惨さは思わず目を背けたくなるほどです。これは、正直言って、R-15くらいに相当する暴力シーン、戦闘シーンに溢れていると思うのですが、全然そういう制限がないですね。
リアルな戦闘シーンは、そのままシリアスな雰囲気を映画に与えます。
主人公の元妻でテロリストの親玉である女や、主人公をかくまった良き知り合いである老人があっさり殺されてしまうあたり、悲しみというよりは、もうやり場のない怒りを感じるしかなく、その後の主人公の強烈な行動付けになっていきます。
そして、そんなあまりに陰惨な殺戮の嵐の中だからこそ、一人の妊婦が子供を生む、ということの神々しさが引き立ってきます。赤ちゃんの泣き声が、まるで世界の救いの声のごとく感じられるのです。
全体的に、かなり暗くて陰惨で救いようのない映画。しかし一方で、個々人の宗教観、倫理観、そして社会観を揺さぶる力を持った映画だと思いました。
途中で、キングクリムゾンの曲「クリムゾンキングの宮殿」がかかったのもちょっと嬉しかった。音楽はジョン・タヴナーも担当しているみたい。
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October 01, 2006
オリジナル版を見た手前、やはり今公開中の「イルマーレ」を見ないわけにはいきません。
さて、感想の第一声としては・・・、悪くは無いけど、オリジナルの韓国版のほうが面白いかなあ、という感じ。
基本的に、ファンタジックなイメージだったオリジナルから、ハリウッド版はリアルな現実感を重視し、ストーリーもなるべく分かり易くさせようと努力している感があります。
あと、やはりお国柄が出るのでしょうか。やはりアメリカ映画っていうのは、すごくきちっと論理的整合が取れていないと製作側が満足しない、というような側面があるように感じます。特に、この映画、設定が大変面白いのだけど、タイムマシン的ネタというのは簡単にパラドックスが作れてしまうので、その穴のふさぎ具合に製作側の違いが現れます。例えば、駅で忘れた小物は、韓国版ではヘッドフォンステレオなのだけど、ハリウッド版では、ケイトが愛読している本。この本の内容を、映画のストーリーとオーバーラップさせたり、本自体が思わぬところで現れたり、いかにもハリウッド的な伏線のはり方。だけど、一度韓国版を見ていると、そういった小細工が逆に小賢しく感じられてしまいます。
もちろん、オリジナルのストーリーの面白さがあったからこそ、今回のリメイクになったのだけど、”待つ恋愛”みたいなテーマに変わってしまったのが、ファンタジー度を下げてしまった気がします。
なんか、「ソラリス」のハリウッド版リメイクを見たときの印象とすごく似ていますね・・・
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September 23, 2006
先週、映画館で初めて韓国映画を見ました。「グエムル」っていう映画です。
突然、グエムルという怪獣が人々を襲い、主人公はさらわれた自分の娘を助けにグエムルと対決する、という内容。グエムルの描写はむちゃくちゃリアルでスゴイ。もちろんCGなのだろうけど、まるでほんとにいるような臨場感があり、人々を襲うシーンはとても良く出来ていました。
しかし、正直言ってちょっとこの映画、焦点の定まらない、奇妙な内容でした。もちろん韓国人じゃないと分からない、という場面もあるのかもしれません。しかし、笑うべきシーンなのか、泣くべきシーンなのか、それさえ分からないようなヘンテコなところもあるし、米軍の扱いとか、賄賂の横行とか、貧困問題とか、そういう社会問題が何のひねりも無く挿入されている感じで、伝えたいことが空回りしています。
とある雑誌には、このようなシュールな設定をすることで、社会の矛盾をあぶりだそうとした、などという監督の言葉があり、確かにその考え方はとても共感するのだけど、残念ながら、そこであぶりだされた物は監督の意図したものとは違うものだったような気がします。本当はカフカの「変身」みたいな感じにしたかったんでしょうかね。
うーん、やはり韓国映画ってそんなものなのかなあ、と思っていたとき、同じく韓国映画「イルマーレ」を家で鑑賞。これ、妻がBSで放映していたのを録画したものでした。内容は時を超えて文通を始めた二人の、ちょっと不思議な恋愛ファンタジー。
この映画はとても素晴らしい。映像も美しいし、ストーリーのアイデアも面白い。それに、そのストーリーが脚本やカメラワークの上手さでとても良く引き立っています。全体的にファンタジック、あるいは寓話的で、リアルな社会問題など一切無いのも私にとっては高得点。
全体的に、事件でどんどんストーリーを動かしていくようなハリウッドタイプの映画でなく、とつとつと静かに時が流れるヨーロッパ的な匂いのする映画でした。かなりシブめですが、これはマジでお薦め。
ちなみに、今週末からハリウッドリメイク版のイルマーレが封切られますね。主人公はキアヌ・リーブス。こちらも見てみたいです。
韓国映画といっても一括りにはやはりできません。グエムルは韓国でヒットしたと聞きましたが、イイものとヒットするものが違うっていうのは、これは世界中どこでも、どんなジャンルでもあることですしね。
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July 24, 2006
もう、ストーリーとかぜんぜん覚えてないんだけど、確か小学校二年くらいのときに、連続ドラマで「日本沈没」を放映していて、それが大好きで、毎週見ていたような記憶があります。当時の私にとって、日曜日の夜は「日本沈没」→「風と雲と虹と」が黄金パターンでした。(←と思ったけど、どうも放映した年が違うみたい。あれ?)
そんなわけで、なんだか懐かしくて映画、見に行きました、「日本沈没」。
いや、悪くないですよ、全体的には。人物造形とか、セリフとかがもう少し練れていればリアリティが増した気がしますが、恐らくこの映画では主人公の恋愛はそれほど重要ではないので、まあどうでもいいです。
やはり、この映画の見どころは、日本が大災害に見舞われ、どんどん沈没していく、その描写そのものにあると言っていいのではないでしょうか。ハリウッドのディザスタームービーとは比べ物にならない痛々しさがそこにはあります。そして、なぜかこの映画を見終わったあと、たまらなく日本という国がいとおしく感じられるのです。(そんな殊勝な気持ちになったのは私だけ?)
でも、日本という土地が無くなって、日本人が世界各地に散らばったら、日本という国はいったいどうなるのでしょう。もしかしたら、世界中を漂流する民族として、かえって日本人としての自覚が高まるかもしれません。そう、ま
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